食べる前に飲む。書きたいときに書く。
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赤ん坊は、産まれたその瞬間に全てを悟る子だった。悟りの子。語られる神や、仏といったたぐいになるに違いない。アラヒトガミってやつだ。しかし、実際そうはならなかった。
母親の胎内から初めて外界へ出たとき、大きな産声を上げた。のも束の間のできごとで、その赤ん坊はぴたっと泣くのをやめてしまった。
これはいけない。助産師は軽く赤ん坊を叩いた。呼吸をしなくては。
しかし、いくら叩いたところでその赤ん坊は一向に泣き始めなかった。口を一文字にむすんでいる。強固な意志があるように。助産師は必死だったが、それもむなしく、赤ん坊は息をしなくなった。
産まれ落ちた瞬間に、これからおこる全ての出来事が赤ん坊の脳裏を駆け巡る。未来を悟る。それはあたかも、死ぬ直前に見るという走馬灯だ。悟ったことは絶対、ということも悟った。全てわかった上でこれからすごすのか。わたしの人生は、予定調和なのか。
かあさん、とうさん、先立つ不幸をおゆるしください。
母親の胎内から初めて外界へ出たとき、大きな産声を上げた。のも束の間のできごとで、その赤ん坊はぴたっと泣くのをやめてしまった。
これはいけない。助産師は軽く赤ん坊を叩いた。呼吸をしなくては。
しかし、いくら叩いたところでその赤ん坊は一向に泣き始めなかった。口を一文字にむすんでいる。強固な意志があるように。助産師は必死だったが、それもむなしく、赤ん坊は息をしなくなった。
産まれ落ちた瞬間に、これからおこる全ての出来事が赤ん坊の脳裏を駆け巡る。未来を悟る。それはあたかも、死ぬ直前に見るという走馬灯だ。悟ったことは絶対、ということも悟った。全てわかった上でこれからすごすのか。わたしの人生は、予定調和なのか。
かあさん、とうさん、先立つ不幸をおゆるしください。
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1999年7月に恐怖の大王が来て、地球を滅ぼす。はずだった。
あれから、13年。大王は今度こそ、地球を滅ぼそうと思っていた。
1996年。大王はひとりにやにやしていた。それもこれも「地球滅亡」の計画を練っては改良し、練っては改良し、納得のいく段階までやっとこぎつけたからだ。あとは、何度もイメージトレーニングや、滅亡にあたっての準備を済ませるだけ。順調に進んでいる実感に、ほくそえむばかり。
大王は、遠足の前日に寝付けないタイプだ。
そんな時だった。運命の出会いだ。大王は恋に落ちた。こんなことははじめてだった。「できちゃった」と彼女から聞かされた時、大王は、生まれてはじめて恐怖を感じた。
彼女の両親に承諾を得るために、彼女の実家へ大王は向かう。昨日はまるで寝付けなかった。大王は最近、恐怖ばかり感じている。
恐怖の大王が、できちゃった婚とは。同時に2つの衝撃的告白を抱えながら、彼女の父親と対峙した時はこれまでで一番の恐怖を感じた。いいや、だが、たじろがない。
大王は娘をさずかった。多少おてんばな子だ。
ああ、しあわせだ。大王はしみじみと思う。恐怖の大王は、結婚すると同時に、恐怖の大王、という役を辞めた。時間が経てば、なにもかもが変化する。
それまでおおくの部下をかかえ、威厳に溢れた日々、恐怖で世界を取り巻くことのできる権限は戻らないが、その時よりもはるかに充実していた。
「ああ、しあわせだ。しあわせすぎて恐いくらいだ」
13年という月日が経ち、大王の娘も立派な女性に成長した。
「話があるの」
ある日娘から不意に言われた。最近、口も聞いてくれなかったから、大王はすぐに反応できずにいた。
「大事な話」
ああ、きてしまったか。久しぶりに大王は恐怖を感じた。
「真剣に交際させていただいています。結婚することもかんがえています」
娘が交際相手を連れてきた。なんだか見た目チャラいんですけど。娘はこれダマされてる系パターンなんですけど。マジか娘よ。お前の目に狂いはないのか娘よ。恐ろしい。恐ろしいぞ。
娘とその交際相手が帰った後、大王はしばらく何も考えられなくなって、ふいにつぶやく。
「恐怖の大王に戻れたら、いますぐにでも地球を滅亡させてやりたいぜ・・・」
あれから、13年。大王は今度こそ、地球を滅ぼそうと思っていた。
1996年。大王はひとりにやにやしていた。それもこれも「地球滅亡」の計画を練っては改良し、練っては改良し、納得のいく段階までやっとこぎつけたからだ。あとは、何度もイメージトレーニングや、滅亡にあたっての準備を済ませるだけ。順調に進んでいる実感に、ほくそえむばかり。
大王は、遠足の前日に寝付けないタイプだ。
そんな時だった。運命の出会いだ。大王は恋に落ちた。こんなことははじめてだった。「できちゃった」と彼女から聞かされた時、大王は、生まれてはじめて恐怖を感じた。
彼女の両親に承諾を得るために、彼女の実家へ大王は向かう。昨日はまるで寝付けなかった。大王は最近、恐怖ばかり感じている。
恐怖の大王が、できちゃった婚とは。同時に2つの衝撃的告白を抱えながら、彼女の父親と対峙した時はこれまでで一番の恐怖を感じた。いいや、だが、たじろがない。
大王は娘をさずかった。多少おてんばな子だ。
ああ、しあわせだ。大王はしみじみと思う。恐怖の大王は、結婚すると同時に、恐怖の大王、という役を辞めた。時間が経てば、なにもかもが変化する。
それまでおおくの部下をかかえ、威厳に溢れた日々、恐怖で世界を取り巻くことのできる権限は戻らないが、その時よりもはるかに充実していた。
「ああ、しあわせだ。しあわせすぎて恐いくらいだ」
13年という月日が経ち、大王の娘も立派な女性に成長した。
「話があるの」
ある日娘から不意に言われた。最近、口も聞いてくれなかったから、大王はすぐに反応できずにいた。
「大事な話」
ああ、きてしまったか。久しぶりに大王は恐怖を感じた。
「真剣に交際させていただいています。結婚することもかんがえています」
娘が交際相手を連れてきた。なんだか見た目チャラいんですけど。娘はこれダマされてる系パターンなんですけど。マジか娘よ。お前の目に狂いはないのか娘よ。恐ろしい。恐ろしいぞ。
娘とその交際相手が帰った後、大王はしばらく何も考えられなくなって、ふいにつぶやく。
「恐怖の大王に戻れたら、いますぐにでも地球を滅亡させてやりたいぜ・・・」
貞子3Dがついにブルーレイで販売だ。
リング は一度映画館で観たが、3Dということもあってか、話題になっていたし気になっていた。
さてと、買ってきたブルーレイディスクを取り出して、観ようじゃないか。
再生ボタンを押してすぐ、ああ、と思った。うちのテレビは3Dに対応していないんだった。何のための貞子なのか。これじゃあそんなに怖くないんじゃないか。
そんなことはなかったぜ。有名な例のシーンが近づいてくる。井戸から出てくる貞子。だんだんと画面に寄ってくる貞子。思わずごくりと喉がなる。ぎゃあああああ。
なぜか今のシーンを巻き戻していた。二度と見たくないが、何かひっかかったのだ。何か、貞子の目の中、瞳孔に何か映っていたような。嫌な不安。背中に汗が、たらあり流れる。
もっとも怖い場面で一時停止のボタンを押す。
ごくり。
3Dでなくてよかったのかもしれない。画面には今にも飛び出してきそうなほど至近距離の貞子、そして貞子の髪、そして恐怖の目。そして目の中にやはり何か見える。これは・・・何かの図形・・・QRコードだ!
震える手でケータイを握り、カメラでQRコードを読み取った。ネットにつながる。が、なかなか読み込まない。くるくると読み込み中のマークが動く。ケータイを持つ手が汗でぬめりはじめた時、どこかのサイトにつながった。太字の赤文字が目に飛び込んでくる。
「3Dテレビが、なんと最大50%オフ!買い換えるなら今!!」
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さてと、買ってきたブルーレイディスクを取り出して、観ようじゃないか。
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そんなことはなかったぜ。有名な例のシーンが近づいてくる。井戸から出てくる貞子。だんだんと画面に寄ってくる貞子。思わずごくりと喉がなる。ぎゃあああああ。
なぜか今のシーンを巻き戻していた。二度と見たくないが、何かひっかかったのだ。何か、貞子の目の中、瞳孔に何か映っていたような。嫌な不安。背中に汗が、たらあり流れる。
もっとも怖い場面で一時停止のボタンを押す。
ごくり。
3Dでなくてよかったのかもしれない。画面には今にも飛び出してきそうなほど至近距離の貞子、そして貞子の髪、そして恐怖の目。そして目の中にやはり何か見える。これは・・・何かの図形・・・QRコードだ!
震える手でケータイを握り、カメラでQRコードを読み取った。ネットにつながる。が、なかなか読み込まない。くるくると読み込み中のマークが動く。ケータイを持つ手が汗でぬめりはじめた時、どこかのサイトにつながった。太字の赤文字が目に飛び込んでくる。
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プロフィール
HN:
ねこぜ
年齢:
40
性別:
男性
誕生日:
1984/05/28