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食べる前に飲む。書きたいときに書く。
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 1999年7月に恐怖の大王が来て、地球を滅ぼす。はずだった。
 あれから、13年。大王は今度こそ、地球を滅ぼそうと思っていた。



 1996年。大王はひとりにやにやしていた。それもこれも「地球滅亡」の計画を練っては改良し、練っては改良し、納得のいく段階までやっとこぎつけたからだ。あとは、何度もイメージトレーニングや、滅亡にあたっての準備を済ませるだけ。順調に進んでいる実感に、ほくそえむばかり。
 大王は、遠足の前日に寝付けないタイプだ。


 そんな時だった。運命の出会いだ。大王は恋に落ちた。こんなことははじめてだった。「できちゃった」と彼女から聞かされた時、大王は、生まれてはじめて恐怖を感じた。


 彼女の両親に承諾を得るために、彼女の実家へ大王は向かう。昨日はまるで寝付けなかった。大王は最近、恐怖ばかり感じている。
 恐怖の大王が、できちゃった婚とは。同時に2つの衝撃的告白を抱えながら、彼女の父親と対峙した時はこれまでで一番の恐怖を感じた。いいや、だが、たじろがない。


 大王は娘をさずかった。多少おてんばな子だ。
 ああ、しあわせだ。大王はしみじみと思う。恐怖の大王は、結婚すると同時に、恐怖の大王、という役を辞めた。時間が経てば、なにもかもが変化する。
 それまでおおくの部下をかかえ、威厳に溢れた日々、恐怖で世界を取り巻くことのできる権限は戻らないが、その時よりもはるかに充実していた。
 「ああ、しあわせだ。しあわせすぎて恐いくらいだ」
 

 13年という月日が経ち、大王の娘も立派な女性に成長した。
 「話があるの」
 ある日娘から不意に言われた。最近、口も聞いてくれなかったから、大王はすぐに反応できずにいた。
 「大事な話」

 
 ああ、きてしまったか。久しぶりに大王は恐怖を感じた。
 「真剣に交際させていただいています。結婚することもかんがえています」
 娘が交際相手を連れてきた。なんだか見た目チャラいんですけど。娘はこれダマされてる系パターンなんですけど。マジか娘よ。お前の目に狂いはないのか娘よ。恐ろしい。恐ろしいぞ。


 娘とその交際相手が帰った後、大王はしばらく何も考えられなくなって、ふいにつぶやく。
 「恐怖の大王に戻れたら、いますぐにでも地球を滅亡させてやりたいぜ・・・」
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プロフィール
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ねこぜ
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40
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男性
誕生日:
1984/05/28
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